2025年8月7日奈良市でAIチャットボットの導入がはじまりました。
これは全国の自治体で進むデジタル化の一環です。
なぜ今、行政はAIチャットボットを取り入れ始めているのでしょうか。
その背景と、導入がもたらすメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
目次
1. 行政がAIチャットボットを導入する背景
高まる行政サービスの効率化ニーズ

近年の少子高齢化に伴い、行政サービスの担い手である職員の数は減少傾向にあります。一方で、住民からの問い合わせは多様化・複雑化しており、限られた職員で膨大な業務をこなす必要が出てきました。
AIチャットボットは、職員が対応していた定型的な問い合わせ業務を自動化し、業務効率化を実現する強力なツールとして注目されています。
24時間365日のサービス提供への期待

住民のライフスタイルが多様化する中、
「役所の開庁時間中にしか問い合わせができない」という課題がありました。
行政においてAIチャットボットは、時間や場所を問わず、住民からの問い合わせにいつでも対応できるため、住民サービスの向上に大きく貢献します。住民は深夜や休日でも必要な情報を得られるようになり、利便性が飛躍的に高まります。
デジタルデバイド対策と情報提供の強化
デジタル化が進む一方で、スマートフォンやインターネットの利用に不慣れな人も多く、情報格差(デジタルデバイド)が問題視されています。
音声入力や分かりやすい対話形式のチャットボットは、デジタルツールに抵抗がある人でも気軽に利用しやすいインターフェースを提供します。
これにより、必要な情報を誰もが手軽に取得できるようになり、住民全体への情報提供が強化されます。
2. 行政におけるAIチャットボットのメリット
メリット1: 住民サービスの向上
- 24時間365日対応:
住民はいつでも必要な情報を得ることができ、利便性が向上します。 - 迅速な情報提供:
問い合わせ内容に応じて、瞬時に正確な情報を提示できるため、住民の「知りたい」というニーズに素早く応えられます。 - 問い合わせ窓口の一元化:
複数の部署にまたがる問い合わせでも、チャットボットが一次対応をすることで、住民のたらい回しを防ぎます。
メリット2: 行政業務の効率化
- 職員の負担軽減:
住民からの定型的な問い合わせ対応が自動化され、職員はより専門的で複雑な業務に集中できるようになります。 - 問い合わせ内容の分析:
チャットボットに蓄積された問い合わせデータを分析することで、住民がどのような情報に関心を持っているかを把握でき、行政サービスの改善に役立てられます。 - 人件費・コスト削減:
多くの自治体で人手不足が課題となる中、チャットボットの導入は長期的なコスト削減にもつながります。
3. 行政におけるAIチャットボットのデメリットと課題
デメリット1: 技術的・運用上の課題
- 情報の正確性:
生成AIの利用は、時折、事実に基づかない「ハルシネーション(誤情報生成)」を引き起こす可能性があります。行政サービスでは情報の正確性が最も重要であるため、このリスクをどう管理するかが大きな課題です。
- システムの導入・維持コスト:
高度なチャットボットシステムは、導入に初期費用がかかるだけでなく、定期的なメンテナンスやアップデート、データ学習にも費用が発生します。 - 運用体制の構築:
導入後も、問い合わせ内容の変化に合わせてチャットボットの学習データを更新するなど、継続的な運用が必要です。専門的な知識を持つ担当者の確保が課題となる場合もあります。
デメリット2: 住民側の課題
- 情報取得の限界:
複雑な手続きや個別の事情を含む問い合わせには、チャットボットだけでは対応しきれない場合があります。
最終的には職員による有人対応が必要となるケースも少なくありません。 - 個人情報の扱い:
住民がチャットボットに個人情報を入力することに対するセキュリティ上の懸念や、プライバシー保護の意識が高まっています。
安全性を確保したシステム設計と、その周知が不可欠です。
まとめ
行政におけるAIチャットボットの導入は、業務効率化と住民サービス向上の両面で大きな可能性を秘めています。
しかし、その効果を最大限に引き出すには、情報の正確性やセキュリティ、継続的な運用体制の構築といった課題をクリアする必要があります。
奈良市をはじめとする自治体は、これらの課題と向き合いながら、より良い行政サービスの提供を目指してAIチャットボットの活用を進めていくことでしょう。